👻 怪異分類
妖怪・怪異の分布 — どの作品で主役/登場するか(本文から抽出)
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幽霊 霊系

扱い 26 作品(⭐=主役)
お文の魂⭐、勘平の死、お化け師匠⭐、奥女中、春の雪解、津の国屋⭐ 他20
『半七捕物帳』の幽霊譚は総じて『ほんとうの怪談ではない』。お文の魂・津の国屋・幽霊の観世物・二人女房・お化け師匠など見せ物・陰謀・愛憎に利用され、≪人間が幽霊を装い又は事故死を幽霊騒動に紛れさせる≫のが基本構図。お化け師匠は養母の虐待死、津の国屋は家柄乗っ取り策、観世物は幽霊見世物を利用した殺人、二人女房は商家の金に絡む殺人。正体は全て作り物。

動物系

扱い 24 作品(⭐=主役)
奥女中、広重と河獺、朝顔屋敷、三河万歳、槍突き、お照の父 他18
狐は小女郎狐・狐と僧・妖狐伝・菊人形の昔で中心的。いずれも「人が人を化かす」で狐の正体は人間。小女郎狐は姉の仇討ちの巧妙な隠れ蓑、妖狐伝は外国人(ジョージ)と贋金づかいお此の犯罪が狐火・天狗と重ねられ、結局「狐が人を化かすのでない、人が人を化かす」。菊人形の昔は狐使いおころが殺され管狐の所在は不明。狐と僧は寺の派閥抗争。柳原堤の女では狐に似た『怪獣』が出るが、それは鼬や貂に似た獣(実在動物)で、見世物に晒される。その他は狐の俗信・比喩が引用されるのみ。

化け物・お化け 霊系

扱い 21 作品(⭐=主役)
お文の魂、お化け師匠⭐、半鐘の怪、朝顔屋敷、弁天娘、津の国屋 他15
お化け・化け物は『お化け師匠』(綽名の踊り師匠が蛇に殺される)、『一つ目小僧』(小按摩ら一味の仮装)、『幽霊の観世物』(幽霊人形の見世物)、『二人女房』(幽霊騒動)で中心的。いずれも正体は人間の仮装・陰謀・事故で、本物の化物ではない。かつて江戸で流行ったお化け屋敷・化け物屋敷の趣向が引用される。

動物系

扱い 20 作品(⭐=主役)
石灯籠、湯屋の二階、お化け師匠⭐、帯取りの池、山祝いの夜、鷹のゆくえ 他14
蛇はお化け師匠・雷獣と蛇・かむろ蛇で中心的な怪異として扱われるが、いずれも正体は人間の仕業。お化け師匠は怪僧(御符売り)が飼い慣らした蛇を使った黒蛇殺人、かむろ蛇は八つ手の葉の呪いを仕組んだお由の小細工(頭の黒い大蛇は観世物のいかさま)、雷獣と蛇は女犯どもが蛇をあやつって従者を殺した事件。向島の寮では土蔵に大蛇を祀る芝居は人為的な罠だった。あま酒売では蛇憑きのような症状は患者の怪しい病で、正体は人間の陰謀。柳原堤の女では蛇や河獺も候補に挙がるが実体は別。

猿(猿芝居) 動物系

扱い 18 作品(⭐=主役)
石灯籠、半鐘の怪、奥女中、鷹のゆくえ、槍突き、お照の父 他12
猿は恐ろしい怪異としては扱われず、猿芝居・見世物・駄洒落(猿の使い)・人を猿に例える言い回しとして多くの作品に登場する。幽霊の観世物では猿を用いた観世物、半鐘の怪や槍突きでは人のあだ名・比喩。中心的怪異はなし。

猫又・化け猫 動物系

扱い 15 作品(⭐=主役)
勘平の死、半鐘の怪、猫騒動⭐、弁天娘、三河万歳、槍突き 他9
猫騒動では『猫ばばあ』おまきの顔が息子の眼に猫に見えたという奇怪な出来事が中心。真相は人間犯罪でも単なる作り物でもなく、二人の眼に本当に猫に見えた(乗り憑きめいた不思議な現象)とされ、曖昧に終わる。その他の作品では猫又・化け猫の俗信が引用される程度。

動物系

扱い 10 作品(⭐=主役)
広重と河獺、津の国屋、お照の父、小女郎狐、狐と僧、ズウフラ怪談 他4
狸は中心的な怪異としては扱われず、向島が「狸も狐も出る」旧地であるという俗信や、ズウフラ怪談・新カチカチ山などの比喩・伝説として登場するのみ。いずれも真相は人間の事件。

化け銀杏 妖怪・怪異

扱い 10 作品(⭐=主役)
広重と河獺、鷹のゆくえ、槍突き、鬼娘、化け銀杏⭐、旅絵師 他4
化け銀杏では、夜に銀杏の木から幽霊のような声や怪事があるとされる『化け銀杏』の伝説を背景に、実は狩野探幽の鬼の絵の真贋を巡る人間の陰謀(贋物と真物のすり替え・三百五十両詐欺)が中心。正体は人間の取引詐欺で、化け銀杏そのものはモチーフに過ぎない。

天狗 妖怪・怪異

扱い 9 作品(⭐=主役)
広重と河獺、朝顔屋敷、海坊主、少年少女の死、妖狐伝⭐、かむろ蛇 他3
川越次郎兵衛では、城に現れた男が『天狗に攫われて宙を飛んで来た』と言う珍事が中心で、それは行方不明や責任逃れのための人為的な言い訳(天狗の本元争い)。妖狐伝では顔の赤い大天狗の姿は外国人ジョージの変装(攘夷を避ける仕掛け)。正体はいずれも人間。

河童 動物系

扱い 8 作品(⭐=主役)
半鐘の怪、広重と河獺、朝顔屋敷、お照の父⭐、張子の虎、海坊主 他2
『お照の父』では武士が田圃に「河童をほうり出した」と言われる珍事が中心。その正体は川に流れて来た死骸(人間か何か)を河童と騒いだもので、真相は人間の事件に絡む死体。その他は向島の河童の俗信を引くのみ。

河獺 動物系

扱い 7 作品(⭐=主役)
広重と河獺⭐、津の国屋、お照の父、向島の寮、海坊主、柳原堤の女 他1
広重と河獺では、河獺が発端の謎を呼ぶが、実体は荒物屋の十右衛門が嫉妬の復讐心から政吉を嵌めようとする人間の陰謀。ただし物語末尾で実在の河獺が現れて政吉の冤罪を証明するという妙味がある。その他は向島に河獺も出たという俗信。

鬼・鬼っ児・鬼娘 妖怪・怪異

扱い 7 作品(⭐=主役)
帯取りの池、三河万歳⭐、鬼娘⭐、化け銀杏、幽霊の観世物、菊人形の昔 他1
鬼娘では『鬼むすめ』(夜に犬を使う獣物使い・お紺)が世間を恐れさせるが、正体は犬を操る人間の犯罪(犬神使いの噂)。三河万歳では上顎に牙が生えた『鬼っ児』の嬰児が中心で、それは市丸太夫が他所の赤児を道具に使う事件。夜叉神堂では鬼の面と夜叉神堂の伝説を背景に、実際は泥棒の犯行が『夜叉神堂の祟り』という噂に化けた。いずれも正体は人間。

蝶(蝶合戦) 動物系

扱い 6 作品(⭐=主役)
帯取りの池、広重と河獺、蝶合戦⭐、河豚太鼓、薄雲の碁盤、白蝶怪⭐
蝶合戦では、夜に無数の蝶が飛び交うのが前兆と騒がれるが、正体は善昌という僧侶が金儲けのために仕組んだ作為(祈祷料を巻き上げる芝居)。白蝶怪では白い蝶が事件のモチーフ・伝説として登場し、真相は人間の殺人(お冬の死)。『奥女中』『冬の金魚』で出る『蝶』は人物名(お蝶・其蝶)のため除外。

死霊 霊系

扱い 6 作品(⭐=主役)
お文の魂、お化け師匠、津の国屋、小女郎狐、金の蝋燭、菊人形の昔
死霊は津の国屋で死んだ者の死霊が語られるが、真相は人間の御家乗っ取り計画。その他作品でも死霊・怨霊の言葉が引用される程度で、いずれも本物の怪異ではない。

妖狐 妖怪・怪異

扱い 4 作品(⭐=主役)
広重と河獺、小女郎狐、妖狐伝⭐、白蝶怪
妖狐伝では、帝都(品川・山王下付近)に妖狐や狐火が出ると騒がれるが、それは贋金づかいのお此・外国人ジョージらの犯罪が狐の仕業に見せかけたもの。「狐が人を化かすのでない、人が人を化かす」と半七老人が締めくくる。広重と河獺などでも狐の旧地として言及されるに留まる。

生霊 霊系

扱い 3 作品(⭐=主役)
お文の魂、小女郎狐、菊人形の昔
生霊は『お文の魂』で嫉み深い女の生霊が念頭に挙げられるが、真相は人間の陰謀。小女郎狐・菊人形の昔でも生霊の言葉が比喩的に出るが、中心的な怪異ではない。

一つ目小僧 妖怪・怪異

扱い 3 作品(⭐=主役)
一つ目小僧⭐、蟹のお角、薄雲の碁盤
一つ目小僧では、夜道に現れる一つ目小僧の正体が、下駄屋・御家人・小按摩・浪人ら一味が押入・脅迫を行うための仮装(小按摩の周悦が化け者)だった。正体は人間の強請・詐欺で、本物の妖怪ではない。蟹のお角・薄雲の碁盤では比喩的に名が挙がる。

半鐘の怪 妖怪・怪異

扱い 3 作品(⭐=主役)
半鐘の怪⭐、お照の父、薄雲の碁盤
半鐘の怪では、半七の町内の半鐘が毎夜鳴って火事騒ぎを起こす『半鐘の怪』が中心。誰かが人を脅かすために合図の半鐘を打ったもので、真相は人間の仕業(半七が若い頃解決した事件の雰囲気を残す話)。お照の父・薄雲の碁盤でも半鐘の俗信が引用される。

雷獣 動物系

扱い 2 作品(⭐=主役)
雷獣と蛇⭐、一つ目小僧
雷獣と蛇では、雷の日に蛇が飛んで来るという雷獣の伝説が背景にあり、実際に起きた殺人が雷獣や蛇の仕業と誤認される。正体は年頃の女どもによる人間の殺人。一つ目小僧では雷獣の言葉が比喩的に出る。

動物系

扱い 2 作品(⭐=主役)
筆屋の娘、熊の死骸⭐
熊の死骸では、死骸の熊・その胆を巡る火事場泥棒(備前屋番頭の四郎兵衛ら)の犯罪が中心。熊は『湯屋の二階』『猫騒動』『吉良の脇指』など多数の作品に『熊蔵(湯屋熊)』『お熊』など人名として登場するが、それは怪異ではないため除外。堀之内で熊の出た噂は俗信程度。真相は人間の窃盗犯。

海坊主 妖怪・怪異

扱い 1 作品(⭐=主役)
海坊主⭐
海坊主では、海に現れるという海坊主の正体が、島流しから脱走した男・万吉が生魚を食い人を脅かす偽海坊主だった。人間の仕業で、怪異の本物ではなかった。

ろくろ首 妖怪・怪異

扱い 1 作品(⭐=主役)
幽霊の観世物⭐
幽霊の観世物では『ろくろ首の娘』の看板を出す観世物小屋が舞台として登場する。見せ物の趣向であり、真相は人間の殺人(幽霊見世物を利用)。ろくろ首そのものが本物の怪異として現れるわけではない。

管狐 妖怪・怪異

扱い 1 作品(⭐=主役)
菊人形の昔⭐
菊人形の昔では、狐使いおころが飼う『管狐』が話題の中核をなし、細い管に潜んで主人に予言を授ける俗信が語られる。おころが殺されたため管狐の行方は不明で、その存在は本物かどうか曖昧のまま。真相は人間の犯罪(狐使い殺害・異人事件)。

雪達磨 妖怪・怪異

扱い 1 作品(⭐=主役)
雪達磨⭐
雪達磨では、大雪の夜に作られた『雪達磨』の底に贋金使いの甚右衛門の死骸が埋められた。正体は人間の犯罪(共謀した商人らが死骸を埋めて隠蔽)で、本物の雪達磨は関わりなし。落とした南京玉が捜査の手掛かりになる。

小女郎狐 妖怪・怪異

扱い 1 作品(⭐=主役)
小女郎狐⭐
小女郎狐(むささびの一品種とされる獣)の怪は、村で流行る伝説として語られる。実際の事件は姉を殺された少女・お竹が五人を討ちとる仇討ち(墓場荒らしや顔かきむしりも狐の仕業に見せかけた)。小女郎狐の噂は事件解決と共に絶える。